支給の繰下げで年金額を増やす
繰下げの対象となる年金
- 老齢基礎年金
- 65歳からの本来の老齢厚生年金
繰上の対象となるのは老齢基礎年金と65歳以降(本来)の老齢厚生年金です。
■付加年金
老齢基礎年金を繰り下げると、付加年金もセットで繰り下げられて増額となります。
■経過的加算
老齢厚生年金を繰り下げると、経過的加算もセットで繰り下げられて増額となります。
■加給年金
老齢厚生年金に加算される加給年金は、増額されないだけでなく、繰下期間中は支給停止となります。
■60歳台前半(特別支給)の老齢厚生年金
60歳台前半の老齢厚生年金は繰下げができません。もし何かの事情で受け取らなければ、5年間の時効を経て受け取る権利が消滅します。時効成立前に受け取ることができたときでも加算はありません。
繰下げよって増える年金額
- 繰下げ対象額 × 繰下げ月数 *1) × 0.7%
*1)
年金を受け取る権利が発生した月(通常は65歳到達日月)から繰下げ請求月の前月までの月数
増額計算の基礎となる厚生年金被保険者期間
65歳からの本来の老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として増額となる老齢厚生年金の額が計算されます。(44条の3第4項)
在職老齢年金により減額対象になっている場合
在職老齢年金による年金の減額が適用されている場合は、(受給していたと仮定して)減額後の老齢厚生年金の額応じて繰下げの対象となる額も減額されるのでその分、繰下げによる年金の増額は減少することになります。
繰下げることができる月数
繰下げできる月数は最短で1年(12月)、最長で10年(120月)です。従って最大で、0.7%×120月=84% が増額されます(令和4年度法改正)。ただし、①昭和27年4月1日以前に生まれた人、②繰り下げ対象となる老齢年金の受給権発生日が平成29年3月31日以前の場合、については従来通り5年が上限となります。
事例
- 老齢基礎年金総額(仮定) :260万円
- 報酬比例部分総額(仮定) :120万円
- 在職老齢支給停止総額(仮定) : 60万円
- 経過的加算総額(仮定) :30万円
- 加給年金総額(仮定) :150万円
- 70歳到達月に繰下げ請求(繰下げ月数60月)
金額は繰下げをしなかったと仮定したときの5年間(60月)の年金総額
年金額は65歳到達月の前月までの平均標準報酬月額等に基づき計算されます
(繰下げ加算額)
{260万+(120万‐60万)+30万}× 0.7% × 60月 = 147万円
加給年金は繰下げの対象になりません。
繰下げ月数は65歳到達月(受給権発生月)から70歳到達月(請求月)の前月までの60月になります。
繰下げ加算額が加算された年金が、70歳到達月(請求月)の翌月から支給されます。
繰下げができないケース
受給権を取得した時点(65歳誕生日の前日)において下記の年金の受給権を有しているときには繰下げはできません。
受給権を取得した日から1年を経過した日(66歳誕生日前日)までの間において上記年金の受給権者となつたときも同様です。
障害厚生年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金
繰下げ申出のみなし規定 (厚金法44条の3第2項)
受給権を取得した日(65歳誕生日の前日)から起算して10年を経過した日前に障害厚生年金、もしくは遺族基礎年金、もしくは遺族厚生年金の受給権者となったときには繰下げの申し出があったともみなされ、前月までが繰下げの対象となり、請求によって加算された老齢年金を翌月分から受け取ることができます。
65歳時点に遡って増額のない年金を一括で受け取ることもできますが、この場合は時効により最大で5年分になります。
受給権を取得した日から起算して10年を経過した日後に繰下げを申し出をしたときには、10年経過した日に繰下げの申し出をしたものとみなされます。
繰下げのよくある質問
既にもらっている老齢年金の受給を中断して、繰下げをすることはできますか?
できません
1年を経過する前に年金を請求した場合は?
繰下げによる年金の増額はゼロになり、65歳時点に遡って増額のない年金を一括で受取ることになります
65歳後に受給権を取得した場合でも繰下げはできますか?
できます
老齢基礎年金、老齢厚生年金いずれか片方だけ繰下げることはできますか?
できます
月単位で繰下げることはできますか?
12月以上、120月以下の範囲で月単位で繰下げることができます