年金の支給開始を繰下げた(遅らせた)ときのメリットは?
年金の繰下げとは?

年金の繰下げは最長で60月、つまり5年で、ひと月遅らせる毎に0.7%の増額になります

私は65歳から年金がもらえるから、もし70歳までの60ヶ月もらうのをガマンすれば、「0.7%×60ヶ月」ってことで42%も増額になるんだね

でも、1年経たずに受取ったら1円も増額になりません
「最低でも1年間は受取るのをガマンする」と覚えておくとよいでしょう

逆に言えば、1年経過後は欲しくなったらいつでも繰下げをやめていいってことだね
繰下げは1ヶ月単位でできるんだから

あともうひとつ、繰下げのいいところは、途中で繰下げを全部やめちゃうことができる点です

5年経つ前に繰下げを止めて、それから年金をもらうってことじゃないの?

いいえ、そうではなくて、初めから繰下げが「なかったこと」にできるんです

???
繰下げのリセット

例えば、繰下げをした当初は年金をもらわくても大丈夫、だと思っていても急にまとまったお金が必要になることはよくあることです

不慮の出来事とか、、?

ええ、そんなときでも繰下げによって受取っていなかった分も請求すれば、まとめて受取ることができるのです
つまり、繰下げ自体が初めから「なかったこと」にできちゃうんです
繰上げだとこうはいきません、つまり「繰上げて受取った年金を返すから減額はやめて」と言う訳にはいきません

それは都合のいい話だけど、年金は増額されるの

遡って全額を受取ったときには残念ながら増額はありません
でも、万が一のときにはこういうこともできるので、迷ったら取り敢えず繰下げをしておいて、腰を据えてどうするかを考えるのもいいかもしれませんね
繰下げたときの損得の分かれ目

では、ここから具体的な数字を示しながら、繰下げについて考えてみましょう

原則で65歳から受取る人が1年繰下げ、つまり66歳から受取るとき、77歳を超えて生きれば繰下げた方が受取る年金の総額は多くなります
同様に、67歳から受取ると78歳まで受取れば繰下げた方が受取る総額は多くなり、68歳からだと79歳、69歳からだと80歳、70歳からだと81歳を超えて生きて年金を受取れば繰下げたほうが総額で多くの年金を受取ることができます

男性の平均寿命は80歳くらいだから、ビミョウなところだね
でも女性の平均寿命は87歳くらいだから、検討の価値は大いにありそうだね

そうですね、男性は66歳か、67歳くらいで繰下げを止めておいた方がよさそうですね
迷うようなら片方だけ繰下げることもできますよ

その、「片方だけ」っていうのは?

老後の年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があるのはご存知ですよね
そのどちらももらえる人は、どちらか一方だけ繰下げることもできます
いくら得になるのか?

では、具体的にどのくらいの年金が増えるのか数字で示してみましょう
この試算ではどれも、繰下げをしない場合の年金額を100万円と想定して試算しています
あくまでも概算ですが、よろしければ参考にして下さい

まずは男性の事例から
男性の平均寿命はおよそ80歳なので、80歳時点での、原則である65歳から受取った場合と、繰下げて受取った場合の受取り総額の差額を示しています

67歳からもらうと総額で約35万円余分にもらえるってことで、逆に70歳から受取ると約38万円も損をしちゃうんだ

この試算はあくまでも概算ですが、男性の場合は繰下げるのであれば2年くらいにとどめておいた方がいいかもしれませんね
次は女性の事例です、女性の平均寿命である87歳で試算してみました

女性の平均寿命まで年金を受取ると、かなり総額が増えることになります
あくまでも試算による概算ですが、年金額100万円の人が1年繰下げて66歳から受取ると総額で約85万円、5年繰り下げて70歳から受取った場合には総額で約256万円多くもらえることになります
健康で長生きする自信のある方は、ぜひ繰下げを積極的に活用してみてはいかがでしょうか?
繰下げのリスク

これまでは寿命、つまりいつまで年金を受取れるかという面から損をしてしまう可能性についてお話してきましたが、もうひとつ、元になる年金額そのものが減ってしまう可能性があることも覚えておいたよいかもしれませんね

週刊誌とかによくある、「年金制度が崩壊」しちゃう、とか?

そこまで大げさな事が起こるのは、まず考えられませんが、年金制度というか、年金額の計算方法が変更されて年金が減ってしまう可能性はあります
そのため、「こんなことになるなら早めにもらっとけば良かった」ということになるかもしれません
でも逆に、元の年金が減ってしまうからこそ、「繰下げで増額しておいてよかった」となるかもしれません

結局は運次第ってことだね、いつまで生きられるか?、ってことも含めて

運と言ってしまえばミもフタもありませんが、つまりは、そういうことでしょうね

なお、ここでは繰下げのお話をしましたが、逆に繰上げて規定よりも早くから年金を受取ることもできます
- 繰上げで早くから年金を受取ろうと考えています、損得について教えてください
支給開始の繰上げについては、下記のページで解説しています
- 支給の繰下げで年金額を増やす