遺族厚生年金の説明
2つの遺族厚生年金(短期要件と長期要件)
遺族厚生年金は短期要件によって支給されるものと長期要件によって支給されるものの2種類あります。
長期要件の遺族厚生年金
多くの家庭では配偶者の一方(主に夫)が会社員として働き、世帯単位で見ると老後に受け取る年金の多くの部分を働いていた方の配偶者に支給される老齢厚生年金が占めています。
働いてた方の配偶者(主に夫)に先立たれた時、受け取っていた老齢厚生年金がゼロになると残された配偶者(主に妻)の生活は困窮してしまうので、その一部が遺族に遺族厚生年金という形に変えて支給されます。
短期要件の遺族厚生年金
これに対して短期要件の遺族厚生年金は、主に現役世代の世帯で、一家の大黒柱(主に夫)が死亡したときの、残された遺族の生活支援を目的として支給されます。
従って、子に支給される場合は成人する前に打ち切りとなり、妻に支給されるときでも年齢によっては打ち切りになることもあります。
また、厚生年金保険料を支払った総額を元に遺族厚生年金の額が決まるのですが、若くして亡くなり厚生年金の加入期間が短かった人の遺族を救済するため300月加入していたと仮定して、年金額を計算する措置があるのが短期要件の特徴です。
遺族厚生年金の受給要件
- 死亡日要件
- 保険料納付要件
この2つを満たす必要があります。
死亡日要件
死亡日において厚生年金の被保険者等であった場合には短期要件、老齢厚生年金の受給権がある場合には長期要件を満たすことになります。
会社員として働きながら老齢厚生年金を受給していた人が死亡したときには短期要件と長期要件の両方を満たすことになるので、いずれか有利な方を選択することになります。
「死亡日要件」の詳細ページ
保険料納付要件
遺族厚生年金の保険料納付要件は遺族基礎年金と同じで下記の2つがあり、
- 死亡日が属する月の前々月までの国民年金被保険者期間のうち、保険料未納の期間が3分の1未満
- 死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がない
「保険料納付要件」の詳細ページ
遺族厚生年金の受給権者と受給できる期間
遺族年金は老齢年金や障害年金ほど複雑でなく、シンプルで理解しやすい構成になっていますが、唯一複雑なのが、「誰に受給権があるのか?」という点です。被保険者(死亡した人)と受給権者(遺族)が異なる点が遺族年金を分り難くしています。
但しほとんどの場合、遺族年金を受け取ることができるのは死亡した夫または妻の配偶者となります。問題はそれ以外の場合で、離婚がからんで子に優先的に支払われる場合や、あるいは父母や祖父母に支払われることもあります。
妻以外は受給権の取得や受給できる期間について年齢制限が設けられています。
遺族厚生年金を受給できる人のうち唯一、妻だけが年齢に関わらず受給権が発生しますが、受給権を30歳未満で取得したときは、扶養する子がいる場合を除き5年間の有期年金になります。
「遺族厚生年金の受給権者と受給できる期間」の詳細ページ
遺族厚生年金の額
遺族厚生年金の額は老齢厚生年金の計算法で計算した額のおおよそ4分の3になります。但し短期要件で受給権を取得した時には老齢厚生年金被保険者期間300月分の最低保証があります(300月みなし)。