年金をやさしく説明..?
「やさしく説明」は無理
「年金をやさしく解説」など、分かりやすい年金の説明をウリにする書籍や雑誌の特集、テレビ番組などをよく見かけますが、それらを目にするにつけ何となく違和感を覚えます。もちろん専門用語を乱発して難解な年金をより分かりにくくしている場合もあります。しかし年金はそもそも複雑で難しいので、それを簡単に説明するのは不可能です。
こんなにある! 年金額を決める要素
例えば多くの方が受給する老齢年金ですが、いくら年金をもらえるのかは、何によって決まると思いますか? ざっと思いつくだけでもこれだけあります。
- 生年月日
- 性別
- 配偶者の有無
- 配偶者の収入
- 配偶者の年金加入状況
- 扶養する子の有無、人数、年齢、障害状態
- 勤めていた会社の基金加入状況
- 勤続年数(厚生年金加入期間)
- 給与額および賞与額
- 国民年金の保険料納付状況、免除
- 付加保険料の納付状況
- 在職老齢年金
- 支給の繰上げ、繰下げ状況
- 他年金の受給権(併給調整)
もちろん年金額の問題以前に、受給できる要件を満たしていなければなりませんが、またこれがあまりにも複雑です。
さらに遺族(厚生、基礎)年金となると年金を受け取る人(遺族)についてもその資格を問われるのでますます複雑になり、場合によっては民法も関係してきます。
また、原則に対する例外が多いのも年金の特徴で、こうも例外だらけだと何が原則で何が例外なのか、さっぽり解らなくなってとても混乱します。
「年金をやさしく説明」とは?
したがって、年金をやさしく分かりやすく説明するには、複雑で分かりにく部分を無視して単純化する、あるいは例外的な部分を意図的に切り捨てたりするしかありません。こうすれば確かに分かりやすい説明になりますが、当然正しく伝えきることはできません。
私もこのサイトでできるだけ分かりやすく年金制度を説明しようと腐心しているのですが、常にこのジレンマが付きまといます。苦肉の策として事例での説明を多用していますが、これならば要件を絞り込んで説明が簡潔になるからです。
複雑で難解な理由?
では、なぜこうも複雑で難解な年金制度になってしまったのでしょうか?
これには戦前から続く年金制度の歴史が大きく関係しているのですが、詳しくは次回で説明したいと思います。
言い訳
最後に言い訳をひとつ。
このサイトのトップページで「世界一分かりやすい年金サイト」と言っています。
世界で一番分かりやすい説明を目指すという意味であって、たとえそれが実現できても、年金はやっぱり難しいことに変わりありません。
「分かりやすいサイトと言いながら、やさしく説明するのは無理だなんてウソつきな奴だ」というご批判はどうがご容赦ください(笑)。