若くして夫が死亡したとき妻に支給される遺族年金の額
ここでは夫がまだ現役世代のときに死亡した場合、遺族となった妻に支給される遺族年金の額について解説します。
ポイント
遺族厚生年金の有無
厚生年金に加入しているサラリーマンの夫が死亡したときには遺族厚生年金が支給されます。死亡時には退職していたときでも、死亡の原因となった傷病の初診日がサラリーマン時代で、かつ、死亡日が初診日から5年以内であれば支給されます。
短期要件による遺族厚生年金
遺族厚生年金を受給する要件には短期要件と長期要件がありますが、ここでは短期要件が適用される遺族厚生年金を前提とします
両者の違いについては下記のページで解説しています。
子があるときは遺族基礎年金が支給される
18歳の3月(一般的に高校を卒業する月)までの子がいるときには遺族基礎年金が支給されます。
サラリーマンの夫が死亡したとき(子あり)
■期間A
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
- 遺族基礎年金:約123万
サラリーマン時代の平均年収が400万円であった場合の遺族厚生年金は約40万円になります。
遺族厚生年金の額はおおよその額は、
サラリーマン時代の平均年収 ÷ 12 × 勤務月数(300月に満たないときは300月) × 0.54% × (3/4)
で求めることができます。
支給対象となる子(18歳年度末までの子)が2人の遺族基礎年金は約123万円、ひとりのときは約100.5万円、3人以上のときは3人目以降、ひとりにつき約7.5万円の増額になります。
■期間B
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
- 遺族基礎年金:約100.5万
遺族基礎年金の支給対象となる子が2人から1人に減るため減額改定が行われ、約22.5万円が減額されて支給額は約100.5万円になります。
支給対象がもともと1人であったときには1人減ると支給対象となる子がいなくなり、遺族基礎年金の受給権は消滅して支給額はゼロになります。
遺族厚生年金の支給額は変わりません。
■期間C-1(40歳前に遺族基礎年金の受給権を失権の場合)
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
40歳になる前に支給対象となる子がいなくなって遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、以降の遺族年金は遺族厚生年金だけになります。
■期間C-2(遺族基礎年金の失権が40歳以降である場合)
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
- 中高齢寡婦加算:約58万円)
妻が40歳到達時に遺族基礎年金の受給権がある(18歳年度末までの子がいる)場合に限り、遺族基礎年金の受給権が消滅した月の翌月から、65歳まで中高齢寡婦加算の支給があります。遺族基礎年金の失権が65歳以降のときには中高齢寡婦加算の支給はありません。
■期間Ⅾ
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
65歳で中高齢寡婦加算は終了して、自身の老齢年金の支給が開始されます。なお、老齢厚生年金が受給できるときには遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給調整が行われます。
生年月日が昭和31年4月1日以前の妻には経過的寡婦加算が支給される場合があります。
(補足:5年で遺族厚生年金が失権するケース)
何らかの事情で妻が30歳になる前に遺族基礎年金が失権となったとき(子が死亡した場合等が考えられます)には、遺族基礎年金が失権してから5年後に遺族厚生年金も失権となります。後に続く中高齢寡婦加算も支給されません。
サラリーマンの夫が死亡したとき(子なし)
夫が死亡した当時、遺族基礎年金の支給要件となる子がいないときは遺族基礎年金は支給されません。
遺族厚生年金の支給パターンは夫が死亡した時の妻の年齢により異なります。
■夫が死亡した時の妻の年齢が40歳以上65歳未満
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
- 中高齢寡婦加算:約58万円(65歳前まで)
65歳前まで中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。
65歳になると中高齢寡婦加算は終了して、自身の老齢年金の支給が開始されます。なお、老齢厚生年金が受給できるときには遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給調整が行われます。
生年月日が昭和31年4月1日以前の妻には経過的寡婦加算が支給される場合があります。
■夫が死亡した時の妻の年齢が30歳以上40歳未満
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円
このケースでは中高齢寡婦加算の支給はありません。
65歳で自身の老齢年金の支給が開始されます。なお、老齢厚生年金が受給できるときには遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給調整が行われます。
■夫が死亡した時の妻の年齢が30歳未満
- 遺族厚生年金(死亡した夫の平均年収400万のとき):約40万円 → 5年間
遺族厚生年金の受給期間は5年間だけになります。
自営業等の夫が死亡したとき(子あり)
会社勤めの期間が無いなどの理由で遺族厚生年金の死亡日要件を満たしていない夫が死亡した場合、遺族厚生年金の支給はありません。
■期間A
- 遺族基礎年金:約123万
支給対象となる子が2人の遺族基礎年金は約123万円です。子がひとりのときは約22.5万円の減額(約100.5万円)、3人以上のときは3人目以降、ひとりにつき約7.5万円の増額になります。
■期間B
- 遺族基礎年金:約100.5万
遺族基礎年金の支給対象となる子が2人から1人に減ると減額改定が行われ、約22.5万円が減額されて支給額は約100.5万円になります。
支給対象がもともと1人であったときには1人減ると支給対象となる子はゼロになり、遺族基礎年金の受給権は消滅して支給額はゼロになります。
■期間C
遺族基礎年金の支給対象となる子がいなくなり失権した後は、寡婦年金支給開始年齢となる60歳になるまで遺族年金の支給はありません。
■期間D
- 寡婦年金
死亡した夫の第1号被保険者期間が25年以上で婚姻期間が10年以上継続していたときは60歳から65歳までの間、寡婦年金が受給できることがあります。
自営業等の夫が死亡したとき(子なし)
子がない妻には遺族基礎年金は支給されません。遺族厚生年金も支給されないので、受給できる可能性があるのは60歳から65歳になる前に支給される寡婦年金だけになります。
(補足)妻が再婚したとき
遺族となった妻が再婚すると、全ての遺族年金は失権になります。しかし、子については母、つまり死亡した夫の妻の再婚によって失権することはありません。支給停止が解除されて子に遺族年金が支給されることもあります。
- 詳細=>離婚、再婚と遺族年金