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法定免除となった障害年金の受給権者に保険料が還付される根拠

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障害認定日以後に支払った保険料が還付の対象となる

以前に、条文から読み解く法定免除されたときの国民年金保険料のページで、障害年金を認定日請求して障害認定日において傷害等級に該当すると認められた場合に、既に支払った保険料が還付される法的根拠が分からないといった話をしました。

改めてこの件についてかいつまんで説明をします。障害年金は障害認定日(原則初診日から1年6月後)において障害状態であることが証明できれば、その障害認定日から傷害等級1級もしくは2級ということになり、請求日までどれだけ経過していても障害認定日に遡って法定免除になるので、障害認定日の前月以降分の保険料は還付の対象になります。

但し国民年金法では、「既に納付されたものを除いて」納付しなくてもよい、とされています。つまり、これを素直に解釈すれば、例え認定日請求が認められて法定免除の資格を得ても、既に支払っている保険料は還付されないことになります。

なぜ法令を無視するようなことが実務で行われてるのか、長い間疑問に感じていましたが先日、このような通知を見つけました。

下記の当時の社会保険庁からの通知(平成18年9月29日 庁保険発第0929002号)に、法定免除の対象となる保険料について、政府の考え方が示されています。

「国民年金保険料の還付に係る事務の取扱いについて(照会)」(平成18年9月26日三局文発第1282号)について、下記のとおり回答する。
国民年金保険料については、国民年金法(昭和34年法律第141号)第89条の規定により障害基礎年金の受給権者となるなど定められた要件に該当するに至ったときは、その該当するに至った日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料について、既に納付されたもの及び同法第93条第1項の規定により前納されたものを除き、納付することを要しないものとされている(法定免除)。
これは、障害基礎年金の受給権発生日等の属する月の前月分以降の保険料については、同日前に納付のあったものを除いて納付義務自体が生じないためであり、その結果、同日以降において納付されていた保険料は、還付することとなるものである。
このため、障害基礎年金が裁定され、その受給権が遡って発生した場合には、当該受給権発生日以降に納付されていた保険料(同日の属する月の前月以降の保険料に限る。)は還付することとなるが、障害の程度が軽快した場合にあっては、保険料の還付を受けることが将来老齢基礎年金を受ける上での不利益な取扱いにつながる恐れがあることから、障害の程度が軽快する可能性のある被保険者については、保険料を還付するに際し、その旨を説明すること。
なお、説明した結果、被保険者が還付対象となる保険料に係る期間を保険料納付済期間とすることを希望する場合には、追納制度を活用することにより対応すること。

ポイントになるのは、「障害基礎年金の受給権発生日等の属する月の前月分以降の保険料については、同日前に納付のあったものを除いて納付義務自体が生じない」の記述のうち、同日前に納付のあったものを除いての部分になります。

国民年金法の法定免除の条文では、「既に納付されたものを除き、納付することを要しない」とありますが、この通知では「既に」、ではなく「同日前に」とされています。図に表すとこのようになります。

保険料が還付されるケース

法定免除によって還付される保険料

法定免除となるのは障害基礎年金の受給権発生日(この場合は障害認定日)の属する月の前月からとなります。受給権発生日以後に支払ったAの期間分の保険料については、そのうちBの期間分の保険料が還付となります。

保険料が還付されないケース

法定免除によって還付されない保険料

障害基礎年金の受給権発生日(この場合は障害認定日)より前に保険料を支払っているので、法定免除の対象となる受給権発生日の属する月の前月以降の月の保険料であっても保険料の還付はありません。

申請免除も同様

この保険料還付の考え方は申請免除にも踏襲されて、申請免除では、申請日後に支払った保険料のうち、免除対象期間分については還付されているようです。

時効の問題

この通知によって政府がどのような法解釈で保険料の還付をしているのかやっと分かりました(釈然とはしませんが)。ただ、これ以外にも不明点があります。

このサイトで詳しく取り上げられているように、還付には時効があります。ここでは詳しい話は省略しますが、還付を受ける権利は2年で時効により消滅します。ところが実務では2年どころか、障害認定日の前月まで、場合によっては何十年も遡って還付が行われているようです。年金の基本権のように時効の援用をしないのであれば、そのことがどこかで規定されているはずですが見当たりません。謎が残ったままです。

時効を優先させると、法定免除の効力を否定することになってしまうことになるので、矛盾を容認しているのか、あるいは(私が知らないだけで)、法定免除を優先する法的根拠があるのか、そのいずれかということになります。

私の解釈

以下、この問題について私の解釈です。
法定免除に該当すれば、上記の通知でも示しているとおり、そもそも保険料を納付する義務が無かったことになります。

つまり、還付という言葉を使ってはいますが、時効の条文で想定している「権利としての還付」ではなく、単に不要な保険料を返還した、ということではと思われます。

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