年金の3号分割(詳細)
3号分割は、離婚した元配偶者の対象期間における2分の1の厚生年金について、合意を得ずに分割を請求できるのがポイントです。
3号分割の制度名称は「被扶養配偶者である期間についての特例」といいますが、一般には3号分割という制度名称が使われています。
そのため、このサイトでは3号分割という名称を用いて説明を行います。
用語の定義
■特定被保険者
3号分割において標準報酬を渡す第2号被保険者であった元配偶者。
■被扶養配偶者
3号分割において標準報酬を受け取る第3号被保険者であった元配偶者。
■特定期間
特定期間とは3号分割の対象となる期間、具体的には婚姻期間中(平成20年4月以降に限る)で、被扶養配偶者が第3号被保険者であった期間を指します。
分割の対象とならない場合
特定期間でも、分割の対象にならないことがあります。
障害厚生年金との関係
特定被保険者が障害厚生年金の受給権者で、特定期間がその年金額が計算の基礎となっている場合、3号分割によって障害厚生年金が減ってしまうことになります。このようなことにならないように、特定期間の全部もしくは一部が特定被保険者が受給する障害厚生年金の計算の基礎となっているときには3号分割を請求することができません。
分割の対象となる標準報酬と分割割合
特定期間の各月における特定被保険者の標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額の合計)の2分の1が被扶養配偶者のものになります。具体的には保険料納付記録が書き換えられて年金額に反映します。
三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例
三歳に満たない子を養育する期間の計算特例を受けている期間については、特例を反映した標準報酬月額(従前標準報酬月額)を用いて計算されます(法78条の14第2項)。
(参考:三歳に満たない子を養育する被保険者の標準報酬月額の特例)
3歳未満の子を養育する厚生年金被保険者の標準報酬月額が養育する前よりも下がった場合には申出により、特例として下がる前の標準報酬月額(従前標準報酬月額)で年金額が計算されます。
被扶養配偶者みなし被保険者期間
3号分割を受けた期間の被扶養配偶者は第3号被保険者です。しかし標準報酬を受け取った月は厚生年金の被保険者期間でなければ厚生年金の額を正しく計算できません。そのためこの3号被保険者の期間は同時に被扶養者みなし被保険者期間として厚生年金の額を計算します。被扶養配偶者みなし被保険者期間の内容は合意分割のみなし被保険者期間と同様です。
被扶養配偶者みなし被保険者期間の詳細ページ
在職老齢年金との関わり
過去1年間の標準賞与額の合計を12で割った平均額が、在職老齢年金の減額幅の計算で使われています。
3号分割での標準報酬月額の増減は、在職老齢年金の年金減額計算に影響しません。しかし、実際には受け取っていない賞与を標準賞与額に反映してしまうと適正な減額幅を計算できなくなります。
そのため、在職老齢年金の支給停止額を計算する際の総報酬月額相当額から分割によって増加した標準賞与額を除外して計算します。(78条の19、46条第1項読替)
3号分割の請求
請求者
3号分割の請求ができるのは被扶養配偶者です。特定被保険者側からの請求はできません。
請求にあたり特定被保険者の同意等は必要ないことが、この3号分割制度最大の特徴です。
請求できる期間
離婚、婚姻の取消後でなければ請求できません。
原則として離婚をした日の翌日から2年以内に請求をしなければなりません。但し、
(例外1)
請求前に特定被保険者が死亡したときは、死亡日から1ヶ月以内に請求しなければなりません。
(例外2)
離婚から2年を経過しても、調停等が確定した日の翌日から1ヶ月以内であれば請求することができます。
合意分割との関わり
年金の合意分割を請求する際、婚姻期間に3号分割の対象となる期間があれば、3号分割の請求分割の請求も同時にされたとみなされ、その3号分割の結果を基にして合意分割が行われます。但し、その3号分割の対象となる期間が特定被保険者が受給権を持つ障害厚生年金の計算の基礎となっているときには、3号分割は行われません。
年金額への反映
老齢厚生年金
老齢厚生年金を受給中の人は3号分割の請求があった日の翌月から、新たな年金額に改定されます。離婚時等に遡ることはありません。そのため、離婚時から最低でも2年間は請求が可能でも、(年金が増える側にとっては)請求は早いにこしたことはありません。
障害厚生年金
老齢厚生年金と同様に請求日の翌月から年金額が改定されます。但し、300月みなしが適用されている場合で、分割を受けることにより逆に年金が減額になるときには改定されません。