離婚、再婚と遺族年金
ポイント
■離婚後に元配偶者が死亡したとき
離婚後に元配偶者が死亡したときには、遺された元夫や元妻には一切、受給権は発生しません。
子の受給権は両親の離婚に影響されることはありません。死亡した父または母と死亡時に生計維持関係にあれば、離婚後であっても受給権は発生します。
■遺族年金支給対象となる子がいないとき
死亡時点で遺族年金の支給対象となる18歳年度末まで(1級もしくは2級の障害等級に該当するときは20歳未満)の子がいなければ、遺族厚生年金は遺された配偶者に優先的に支給され、遺族基礎年金の受給権は発生しません。
■遺族年金支給対象となる子がいないとき
一方、支給対象となる子がいるときには様々なケースが想定されます。ここでは、対象となる子がいる場合の再婚や離婚に伴う遺族年金の受給権と支給停止について、典型的な事例をいくつか紹介します。
■再婚
遺族となった妻または夫が再婚したときは、例外なく遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)は失権となります。しかし、親の再婚が原因で子が失権することはありません。
■養子縁組
遺族年金の受給権がある子は養子になったときには原則失権となりますが、直系姻族との養子縁組の場合は例外的に失権しません。従って、親の再婚相手の養子となっても遺族年金は失権になりません。
また、祖父母(直系血族)との養子縁組でも子は失権となりません。
遺族となった妻が子連れで再婚したとき
再婚する前は遺族となった妻が遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給し、子はどちらの遺族年金も支給停止となっています。再婚することで妻は遺族基礎年金、遺族厚生年金どちらも失権となります。
一方、連れ子は、妻が失権したことにより支給停止が解除されて遺族厚生年金を受給できることになりますが、遺族基礎年金は、「生計を同じくするその子の父または母」がいるため支給停止のままとなります。(いなければ遺族基礎年金も受給できます)。
養子縁組について
子が養子となったときには、遺族基礎年金も遺族厚生年金も失権となりますが、例外的に直系血族もしくは直系姻族の養子となったときには失権しないとされています。従ってこの事例では妻の再婚相手と養子縁組をする、しないに関わらず上記のような結果となります。
再婚相手である夫が死亡したとき
子供をつれて再婚し、再婚相手である夫が死亡したケースです。この場合は子が死亡した夫と養子縁組をしていたのかがポイントになります。
子と再婚相手である夫が養子縁組をしていたら、妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できますが、していなければ妻が受給できるのは遺族厚生年金だけになります。
子は再婚相手(死亡)と養子縁組をしていなかったならば遺族年金の受給権は発生しません。養子縁組をしていたときは遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権が発生します。しかし、生計を同じくする母(=遺族となった妻)に支給される間、支給停止となります。
夫が子を引き取り再婚した後に死亡したとき
夫が子を引き取り子連れで再婚したときのケースです。この場合は夫の死亡により後妻と子の双方に遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権が発生します。前妻は既に離婚しているので遺族年金の受給権は発生しません。
後妻には「生計を同じくする(死亡した夫の)子」がいるので遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。この場合、後妻と子が養子縁組をしている必要はありません。子に対する遺族基礎年金と遺族厚生年金は後妻が受給している間、支給停止となります。
妻が子を引き取り前夫が再婚した後に死亡したとき
子を前妻が引き取った後も、離婚した夫の経済的な負担で生活していた子がある場合の事例です。生計維持関係がある父が死亡したため、子には遺族基礎年金の受給権が発生しますが、「生計を同じくするその子の母」がいるため支給停止になります。
遺族厚生年金の支給は子が優先されるため、後妻の遺族厚生年金は支給停止となり、子に遺族厚生年金が支給されます。その後、子が18歳の年度末を迎えて遺族基礎年金と遺族厚生年金が失権になると後妻の遺族厚生年金の支給停止は解除となり遺族厚生年金が支給されることになります。
子が母と生計同一でないとき
上記は前妻と子が生計を同じくしているときの事例ですが、ここでは何らかの事情により母と子の生計が別々になり、例えば子が祖父母等に引き取られたような場合を想定しています。その場合、子には遺族基礎年金が支給されます。
遺族基礎年金が子に支給されている間、遺族厚生年金も子に支給されるので、後妻の遺族厚生年金は支給停止となります。その後、子が18歳の年度末を迎えて遺族基礎年金と遺族厚生年金が失権になると後妻の遺族厚生年金の支給停止が解除されて、後妻に遺族厚生年金が支給されます。
祖父母との養子縁組
祖父母の養子となったときには直系血族との養子縁組となるので遺族基礎年金と遺族厚生年金は失権になりません。そのため祖父母の養子になる、ならないに関わらず上記のような結果になります。
再婚した元夫が死亡、再婚相手との間に子がいるとき
前妻と離婚した元夫が再婚し、後に再婚相手の妻との間に子をもうけたときの事例です。
この場合では後妻が「子のある配偶者」となり、最優先で遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。後妻との間に生まれた子よりも前に前妻との間に生まれた子が18歳の年度末に到達するので、前妻との間に生まれた子には遺族年金は支給されず、後妻との間に生まれた子が18歳の年度末に到達して遺族基礎年金が失権になると、後妻に支給されるのは遺族厚生年金のみになります。