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年金の合意分割(詳細)

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離婚したときに、婚姻期間の厚生年金について多い方から少ない方へ受け渡すのが年金の合意分割です。

この分割は3号分割のような強制力はなく、両者の同意や裁判所の決定によって、その額が決まります。

この制度の正式な名称は「被扶養配偶者である期間についての特例」ですが、一般的には「年金の合意分割」と呼ばれています。

そのため、このサイトでも年金の合意分割という制度名称を用いて解説します。

用語の説明

■対象期間

年金分割の対象となる期間を指し、具体的には合意分割の場合は婚姻期間が対象期間となります。

なお、合意分割は平成19年4月1日以降に離婚した場合にしかできませんが、この日より前の婚姻期間も対象期間となります。一方3号分割では平成20年4月1日以降の婚姻期間で配偶者のいずれかが第3号被保険者に該当する期間が対象となり、特定期間といわれています。

■対象期間標準報酬総額

対象期間の標準報酬月額と標準賞与額の総額を対象期間の末日における再評価率を用いて再評価したもので、離婚する両者それぞれにつき算定されます。

対象期間に平成15年4月1日前の期間があるときは、同日前の期間の標準報酬月額の総額に1.3を掛けた額とその日以降の期間の標準報酬月額と標準賞与額の総額との合計を、対象期間の末日における再評価率を用いて再評価したものとなります。

■第1号改定者

離婚した夫婦のうち、対象期間標準報酬総額の多い方(3号分割適用後)を指します。

■第2号改定者

離婚した夫婦のうち、対象期間標準報酬総額の少ない方(3号分割適用後)を指します。

Step1:3号分割の適用

合意分割を申請したときには、同時に3号分割についても請求されたとみなされ、3号分割の結果を反映して合意分割の基礎である按分割合が決められます。

Step2:按分割合の決定

按分割合の範囲

按分前の第1号改定者の対象期間標準報酬総額 ÷
(按分前の第1号改定者の対象期間標準報酬総額+按分前の第2号改定者の対象期間標準報酬総額)
< 按分割合 ≦ 2分の1

ポイント

  • 「按分割合=総額に占める年金分割後の第2号改定者の割合」になります
  • 第2号改定者(少ないほう)の額を増やす方向でしか按分割合は決められません
  • 最大でも2分の1、つまり両者の対象期間標準報酬総額が等しくなるのが上限で、それを超えて第2号改定者の額を増やすことはできません

按分割合は、両者が協議して決定をします。

Step3:改定割合の算定

改定割合とは

改定割合は、第2号改定者に引き渡される、第1号改定者の対象期間標準報酬総額の割合です。

例えば改定割合が10%であれば、第1号改定者の対象期間標準報酬総額が10%減額となり、その分が第2号改定者の対象期間標準報酬総額に加算されます。

改定割合の算定式

[按分割合-分割前の第2号改定者の対象期間標準報酬総額÷分割前の第1号改定者の対象期間標準報酬総額×(1-按分割合)] ÷ (按分割合-按分割合×変換率+変換率)

一見すると複雑そうに見えますが、式を2つ(下記のa及びb)に分けると簡略化できます。

改定割合算定式a

  • 按分割合-分割前の第2号改定者の対象期間標準報酬総額÷分割前の第1号改定者の対象期間標準報酬総額×(1-按分割合)

改定割合を求める本体となる式です。

分割前の第1号改定者の対象期間標準報酬総額 = ①
分割前の第2号改定者の対象期間標準報酬総額 = ②
按分割合 = A
改定割合 = W
①と②の合計に対する、分割後の第2号改定者の年金額(② + ①×W)の割合が按分割合(A)に等しくなります。

この一次方程式、

[(② + ①×W)÷(① + ②)] = A

を展開してW(改定割合)求めているのが改定割合算定式aになります。

改定割合算定式b

  • 按分割合 – 按分割合 × 変換率(*) + 変換率(*)

*)変換率
第2号改定者の再評価率で再評価した第1号改定者の対象期間標準報酬総額÷第1号改定者の対象期間標準報酬総額

上記の改定割合算定式aで第2号改定者に渡される年金額は、第1号改定者の再評価率で算定されたものになります。それを第2号改定者の再評価率に補正するのが改定割合算定式bになります。

このため、両者の年金合計額はほとんどの場合で分割前と分割後では異なります。

Step4.標準報酬の改定

対象期間の各月につき、双方の標準報酬月額と標準賞与額が改定されます。

(第1号改定者)

  • 改定後の標準報酬月額:改定前の第1号改定者の標準報酬月額×(1-改定割合)
  • 改定後の標準賞与額:改定前の第1号改定者の標準賞与額×(1-改定割合)

(第2号改定者)

  • 改定後の標準報酬月額:改定前の第2号改定者の標準報酬月額+改定前の第1号改定者の標準報酬月額×改定割合
  • 改定後の標準賞与額:改定前の第2号改定者の標準賞与額+改定前の第1号改定者の標準賞与額×改定割合

3歳に満たない子を養育する期間

3歳に満たない子を養育する期間の計算特例を受けている期間については、特例を受けたの標準報酬月額(従前報酬月額)を用いて計算されます(法78条の6第1項1号、2号)。

ただし、合意分割に先立ち3号分割が行われるときにはこの規定は(既に3号分割で適用されているので)適用されません(法78条の20第5項)。

ポイント

対象期間の全ての各月について第1号改定者から第2号改定者への受け渡し(厚生年金記録の書き換え)が行われて、それぞれの標準報酬月額及び標準賞与額が改定されます。

分割の結果、単月では第2号改定者の方が多くなることもあります。

第2号改定者の方が元々多い月についても行われるので、単月では第2号改定者の額が更に多くなることもありえます。

離婚時みなし被保険者期間

対象期間のうち、第2号改定者が厚生年金の被保険者でなかった月について標準報酬の受渡されたとき、その月は離婚時みなし被保険者期間として厚生年金額が計算されます。

在職老齢年金との関わり

過去1年間の標準賞与額の合計を12で割った平均額が、在職老齢年金の減額幅の計算で使われています。

離婚分割での標準報酬月額の増減は、在職老齢年金の年金減額計算に影響しません。しかし、実際には受け取っていない賞与を標準賞与額に反映してしまうと適正な減額幅を計算できなくなります。

そのため、在職老齢年金の支給停止額を計算する際の総報酬月額相当額から分割によって増加した標準賞与額を除外して計算します。(78条の11、46条第1項読替)

三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例

三歳に満たない子を養育する期間の計算特例を受けている期間については、特例を反映した標準報酬月額(従前標準報酬月額)を用いて計算されます(78条の6)。

(参考:三歳に満たない子を養育する被保険者の標準報酬月額の特例)
3歳未満の子を養育する厚生年金被保険者の標準報酬月額が養育する前よりも下がった場合には申出により、特例として下がる前の標準報酬月額(従前標準報酬月額)で年金額が計算されます。

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