障害者になって働けなくても障害年金がもらえない矛盾
不幸にも障害状態になってしまった方にとって、障害年金は定収入を得るため最後の砦といえるものです。ところが多くの人は働けなくなっても障害年金が支給されません。
ここで「支給されない」と言っているのは、保険料未納であるをことを理由とする場合のことではありません。定められた保険料を支払っていないような場合には、自助努力を前提としている社会保障制度の下ではある意味、止むを得ない部分もあります。しかし、きちんと被保険者としての義務を果たしていても、やはり受給できないことが頻繁に起こります。
一般状態区分表による障害の程度
障害年金では障害の程度の尺度として一般状態区分表というものが使われています。傷病毎でも規定されていますが、概ね、このような区分になっています。
- 1級:身の回りのことについても、ほとんどのことで介助が必要
- 2級:身の回りのことでしばしば介助が必要となり、自力での外出も困難
- 3級:軽作業程度の労働しかできない
3級は働けること、働くことが前提?
ここでひとつ問題があります。
- 障害基礎年金:障害等級3級時の年金支給がない
- 障害厚生年金:障害等級3級時の年金支給がある
3級の障害等級に該当する人で障害厚生年金がない、障害基礎年金だけの人は、障害年金が全く支給されません。
おそらく、「3級は働けるんだから、働いて稼ぐように」というのが、政府の方針なのでしょう。
3級の実情
では、実際にはどうなのか、3級の人はちゃんと働けるのか?、ということになります。
過去に厚生労働省が調査した結果によると、障害等級3級で障害厚生年金が支給されている人の約2割が、何らかの職に就いているそうです。
これを逆にみると、約8割の人が働いていないことになります。この8割の人が全員、働かなくてよい環境に恵まれているのならよいのですが、3級の年金額を考慮すると、ほとんどの人が働きたくても働けないのであろうと、容易に想像できます。
ここから推測すると、障害等級3級に該当して働けないにも関わらず、障害基礎年金の受給権しかないために、1円ももらえない人が大勢いると考えるのが妥当です。
認定基準のズレ
もう一つ、気になることがあります。
1級と2級では日常生活を基準としているのに3級になると急に障害の評価尺度が労働に変わってしまい、前後の整合がとれず空白ができてしまいます。
1級にも2級にも該当しなければ必然的に3級以下になるわけですが、日常生活的には2級に該当しなくても、労働は困難である人はたくさんいます。特に精神障害で働けない人は、日常生活はなんとかこなせても、職場では深刻な困難を伴い就労できない人が多く見受けられます。
そのような人は就労が著しく困難でも3級以下の扱いとなり、障害基礎年金の受給権しかない人は障害年金の支給額はゼロになってしまいます。