傷病手当金の詳細と、障害年金との関わり(令和4年度)
障害等級に該当するような障害状態になっても、障害認定日(原則、初診日から1年6月後)までは障害年金の支給はありません。
傷病手当金は、この「空白の1年6月」を埋める役割を果たしています。(障害年金の支給対象にならないような傷病でも支給対象になります)。
但し、傷病手当金は健康保険の給付制度なのでサラリーマンなどの健康保険加入者にしか支給されません。
傷病手当金の支給要件
- 1.療養のため労務に服することができない
- 2.連続した3日間の待期期間がある
1.療養のため労務に服することができない
■療養とは
ここでいう「療養」とは、必ずしも医療機関を受診して健康保険の医療給付を受けたときに限らず、いわゆる自宅療養のような場合でもよいとされています。
但し傷病による療養でない場合(美容整形など)は療養とみなされません。
■労務に服することができない、とは
あらゆる労務が全くできない状態とは解されていません。ごく軽微な内職的、あるいは副業的な労務であれば、場合によっては労務に服することができない状態であると認定されます。
2.連続した3日間の待期期間がある
待期期間とは傷病が原因で労務に服することができない期間のことをいいます。従って、会社の公休日であっても問題ありません。また、有給休暇として給与の支給があっても待期期間となります。
この様な日が3日連続すると待期が完成し、その後の労務に服することができない各日につき、傷病手当金が支給されます。
3日間の待期が完成したので、その翌日から傷病手当金が支給されます。
連続する日数が3日に満たなければ待期は完成しません。3日連続して待期完成となります。
1度待期が完成したら、同一の傷病であれば3日間の待期期間は改めて必要とされません。
支給額
一日あたり支給額 = A ÷ 30 × (2/3)
Aは以下のようになります。
(支給開始日が属する月から、それ以前に連続した12ヶ月の標準報酬月額がある場合)
支給開始日が属する月以前の継続した12ヶ月の標準報酬月額の平均額
(支給開始日が属する月から、それ以前に連続した12ヶ月の標準報酬月額がない場合)
(a)、(b)いずれか少ない方の額となります。
(a)支給開始日が属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
(b)30万円(支給開始日が平成31年度以降の場合)
注)平成28年4月から、法改正により支給額の計算法が変わりました。
報酬等との調整
有給扱いになった等で報酬等を得ることができるときは、報酬等が上記で計算した支給額よりも少ない場合に限り、両者の差額が支給されます。
この図の例ではAのケースは報酬等が全くないので全額が支給されます。Bのケースでは報酬等との差額が支給額となり、Cのケースでは傷病手当金は支給されません。
支給期間と日数
同一の傷病につき、支給開始から1年6月の間で上記の「労務に服することができない」、に該当した各日に支給されます。
事業所の公休日であっても支給の対象となります。
退職後の継続給付
就労期間中に3日間の待期が完成し、4日目以降に傷病手当金が支給されたときには(有給休暇などにより報酬が支払われたため、傷病手当金が支給されない場合でも可)、退職後でも、要件を満たした各日に支給されます。
但し、退職後は継続して受給することが要件となるので、退職日が支給対象日でなければ退職後は継続して受けることができません。(有給休暇等で給与の支給があっても、その傷病が原因で退職日に就労できなければ退職後も傷病手当金を受けることができます。)
同様の理由で、一旦、就労が可能になると、1年6月の期間内であっても以降の支給はありません。
退職後の継続給付は1年以上の健康保険被保険者期間(任意継続被保険者期間を除く)があったことが要件となります。
傷病手当金と年金の支給調整
基本的には傷病手当金の支給期間終了後が障害年金の支給期間になりますが、障害認定日の例外に該当したり、あるいは初診日から1年6月が経過する前に治癒(症状の固定)した等の場合は、傷病手当金と障害年金の支給期間が重複することがあります。
このように同一の傷病につき同時に障害年金と傷病手当金の受給権が発生するときには、傷病手当金は支給停止となり障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金)が優先して支給されます。但し障害基礎年金と障害厚生年金の合計を360で割った額が傷病手当金を下回るときは、両者の差額分が傷病手当金として支給されます。
つまり、結果的に支給される総額は①傷病手当金の額、②障害基礎年金と障害厚生年金の合計を360で割った額のうち、いずれか高い方となります。
また、同様のしくみが老齢年金にも適用され、傷病手当金と老齢年金の受給権があるときには調整が行われます。
上図Aのケースでは年金額が傷病手当金相当額に満たないため、年金額と傷病手当金相当額の差額分が傷病手当金として支給されます。一方、Bのケースでは年金額が傷病手当金相当額を上回るため、傷病手当金は支給されません。
調整の例外
下記に該当するときは調整は行われません。
1.障害基礎年金のみの場合
支給されるのが障害基礎年金のみで、障害厚生年金がない場合はこの調整は行われず、傷病手当金が全額支給されます。
2.支給事由が異なる場合
障害年金と傷病手当金の支給事由となる傷病が異なる場合は調整は行われず、どちらも支給されます。