厚生年金額決定法の歴史的経緯
厚生年金についても、物価スライド特例水準と本来水準の関係については基本的に国民年金と同じですが、厚生年金特有の部分があるので、その点について解説します。
厚生年金は、物価スライド特例水準、本来水準、従前額保障、の改定水準がありますが、平成27年度以降は物価スライド特例水準による改定はありません。
それぞれどの様な意味合いを持つのか、これまでの経緯を踏まえて説明します。
平成6年改正水準(物価スライド特例水準)
平成6年水準の年金額は、完全物価スライド制で算定されていました。このときの算定法を一部改定したのが物価スライド特例水準で、国民年金のものと基本的に同じ考え方に基づいています。
但し、国民年金の物価スライド率は0.968(平成25年10月)であるのに対して厚生年金は1.031×0.968となっています。
厚生年金の場合、国民年金よりも前の平成6年の物価が基準になっています。そのため、平成6年から平成10年の物価変動率の累積である1.031を余分に掛けてこの水準の年金額を算定しています。
再評価率は平成6年のものが固定で適用されます。
平成27年度以降は国民年金と同様に、物価スライド特例水準による年金改定はありません。
平成12年改正水準(従前額保障)
法改正により老齢厚生年金給付乗率の5%減が決定しました。しかし、この影響を小さくするため7.5/1000の乗率を据え置き、従前の額を保障するとされました。
ただし、過去に繰り越された減額分(1.7%)を解消するために上記の物価スライド特例水準よりも支給額が少なくなるよう、物価スライド率の代わりに従前額改定率を用いて改定を行います。
従前額改定率は、物価スライド特例水準と同様に平成6年の年金額が基準となっているので、国民年金の改定率とは異なった数値となっています。
1.7%減額繰越と解消の経緯は、こちらで解説しています
再評価率は平成6年のものが固定で適用されます。
平成16年改正水準(本来水準)
本来水準では繰越減額分(1.7%)の解消と合わせて、給付乗率が5%減額された年金額となっています。(7.5/1000から7.125/1000、5.769/1000から5.481へ)
本来水準では、物価スライド特例水準のスライド率や、従前額保障の従前額改定率に当たる係数がありません。
年金額の改定は、再評価率を改定率で改定することによって行います。
- 参照:再評価率とは
- 参照:年次年金額の改定:改定率の決定方法
現状
物価スライド特例水準が終了して、現在では従前額保障と本来水準が併存し、いずれか高い方の厚生年金額が支給されていれます。
- (参考):老齢厚生年金の報酬比例部分の額:詳細