積立方式と賦課方式
「日本の年金はかつては積立方式だったが、後に賦課方式に・・」といった話はよく耳にします。その、積立方式と賦課方式について少し詳しくお話したいと思います。
収支均等の法則
年金財政は一定期間の総収入と総支出の額が等しくなければなりません。これを収支均等の法則といいます。
どこを取ってそのバランス、つまり収支を等しくするのかが、積立方式と賦課方式の違いになります。
積立方式
同じ世代において支払った保険料(負担)と将来受取る年金(給付)を等しくする方式です。
働いて得た収入の一定額を貯蓄をし、利息をプラスしてリタイア後に自分で受けることをイメージすると分かりやすいでしょう。
賦課方式
一定期間の保険料(負担)と年金(給付)の収支が等しくする方式です。
働いて稼いだお金の一部を親(の世代)に仕送りするイメージになります。
メリットとデメリット
賦課方式の場合
賦課方式の場合、世代間格差が大きくなるのが最大の問題点です。現役世代5人で1人の年金受給者を支えていたときと比較して現役世代1人で1人の受給者の年金を負担しなければならなくなると、極端なことを言えば年金額を5分の1にするか、もしくは保険料を5倍にしなければなりません。
さらに賦課方式の場合は現役世代の年金未納があると、当たり前ですが制度が成り立たなくなってしまいます。昨今では保険料の督促や強制徴収が厳しくなっていますが、そうしないと年金制度を維持することができないからです。
積立方式の場合
一見して問題がないように見受けられる積立方式にも問題があります。インフレが起こって貨幣価値が下がると、年金の手取り額が減ってしまいます。
例えばパンが1個100円のときに同じ額である100円の保険料を納めたとしましょう。そして何十年か経過して150円の年金を受取ることができたします。つまり、支払った保険料の1.5倍の年金を受け取ることができたわけです。ところがその時にはパンの値段が300円になっていたらどうでしょうか? パン1個分の保険料を納めたのに受取った年金では半分しか買えません。
私たちは長い間デフレに慣れてしまっているので、インフレと言われてもピンと来ないかもしれませんが、年金の運用期間が長い諸外国では実際にこの問題が起きています。もちろん日本も他人事とは言い切れません(何しろ国と地方で1000兆円を超える借金を背負っているのですから)。
日本は賦課方式と言われているが
一般に日本の年金財政は賦課方式を採用しているといわれています。もちろん間違いではありませんが、100%賦課方式であるとも言い切れません。そのあたりを年金財政の歴史をからめて次回お話したいと思います。