令和4年度法改正:配偶者加給年金の支給条件
老齢厚生年金及び障害厚生年金に加算される配偶者加給年金の加算条件が変更されました。
改正前:配偶者が老齢厚生年金(加入月数240月以上)の受給権を有している場合でも、その老齢厚生年金が支給停止である場合は加給年金が加算されました。
改正後は支給停止になっている場合でも加給年金は支給されません。
加給年金の詳細は、下記のページで解説しています。
具体例
在職老齢年金による老齢厚生年金の支給停止
配偶者の60歳台前半の老齢厚生年金が在職老齢年金によって全額支給停止となっていたときには加給年金が加算されていましたが、改正後は支給停止になります。
配偶者が障害基礎年金を受給している場合
この場合は配偶者の老齢厚生年金は支給停止となりますが、加給年金の加算はありません。
配偶者が障害厚生年金を受給している場合
上記と同様に、加給年金の加算はありません。
経過措置
令和4年3月時点で、①加給年金が付加された厚生年金が支給されている、もしくは、②配偶者の老齢厚生年金(加入期間が240月以上)が全額支給停止になっているときには、この支給条件の変更は適用されません。
但し、加給年金を受ける権利が消滅(配偶者の65歳到達、離婚、死亡等)となった時以外にも、以下の条件いずれかに該当したときには、この経過措置は終了します(日本年金機構のホームページより)。
- (1) 本人の老齢厚生年金または障害厚生年金の全額が支給停止されることとなったとき
- (2) 配偶者が失業給付の受給終了により老齢厚生年金の全額支給停止が解除されたとき(失業給付の受給により、配偶者の令和4年3月分の老齢厚生年金が全額支給停止されていた場合に限る。)
- (3) 配偶者が、年金選択により他の年金の支給を受けることとなったとき
((2)または(3)に該当する場合は、経過措置終了の届出が必要となります。)
余談
ここでは法改正として紹介していますが、厳密には法改正ではありません。
老齢厚生年金における加給年金の支給停止については46条6項で以下のとおり定められています。
6 第四十四条第一項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。
支給条件が変わる以前から同様の条文で変更はありません。つまり、『支給を受けることができる』の解釈が変更されて、以前は受給権があっても支給停止であれば『支給を受けることができない』と解釈されていたのに対して、改正後は受給権があれば支給停止であるないに関わらず『支給を受けることができる』とされたのです。
このような制度運用は、大いに疑問を感じます。国家の根幹である法律の条文で、あいまいな表現を使い、恣意的に運用・解釈するのが法治国家のやることでしょうか?。こんなことはやめてほしいと思います。