寡婦年金と死亡一時金の比較と選択基準
夫が死亡して寡婦年金の受給権を取得したときには、同時に死亡一時金の受給権も発生するので、どちらかを選択することになります。
寡婦年金は年金で死亡一時金は一時金なので、一見すると寡婦年金を受け取る方が有利に思えますが、必ずしもそうとは限りません。
寡婦年金と死亡一時金の詳細は下記のページで解説しています。
対比表
比較項目 | 寡婦年金 | 死亡一時金 |
---|---|---|
区分 | 夫の死亡後で60歳から65歳になる前の間(最長5年間)の有期年金 | 一時金 |
死亡者の保険料納付・免除期間 | 1号として10年以上 | 1号として36月以上 |
受給権者 | 婚姻期間が10年以上の妻 | 配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹 |
受給権者の生計維持要件 | 生計維持であること | 生計同一であれば可 |
受給権者の年齢要件 | 65歳未満 | 年齢要件なし |
遺族年金との調整 | いずれかを選択 | 遺族基礎年金が優先 |
繰上老齢基礎年金との調整 | 老齢基礎年金を繰上受給すると寡婦年金は失権 | 併給可 |
60歳台前半老齢厚生年金との調整 | 選択 | 併給可 |
選択の基準
■寡婦年金の受給期間が短い場合
寡婦年金は65歳になると受給できなくなります。したがって受給権が発生してから65歳になるまでの期間が短い場合は死亡一時金の方が受け取る金額は多くなることがあります。
■遺族年金を受給できる場合
遺族年金(遺族基礎年金及び遺族厚生年金)と寡婦年金は同時に受給することはできないので、いずれかの選択なります。
遺族基礎年金の受給額は、必ず寡婦年金の額を上回ります。従って寡婦年金を選択する理由はありません。(但し、年齢的に寡婦年金の受給権者が同時に遺族基礎年金の受給権者になることはかなりまれなケースと言えます。)
従って主に問題になるのは遺族厚生年金のみを受給できるときになります。この場合は「65歳になる前までの遺族厚生年金受取総額+死亡一時金」と寡婦年金受取総額の多い方を選択します。
■老齢基礎年金の繰上を検討している場合
死亡一時金であれば調整がなくどちらも全額受給できます。
老齢基礎年金を繰上受給すると、寡婦年金を「放棄」することになります。生涯に渡り老齢基礎年金が減額されることを勘案し慎重に判断すべきケースです。
■60歳台前半(特別支給)の老齢厚生年金を受給できる場合
60歳台前半(特別支給)の老齢厚生年金と寡婦年金を選択することになりますが、死亡一時金ならば60歳台前半の老齢厚生年金を受給していても受け取ることができます。
従って「60歳台前半の老齢厚生年金総額+死亡一時金」が寡婦年金総額を超える場合は死亡一時金を選択したほうが有利になります。