経過的加算の説明
厚生年金加入期間と老齢基礎年金の関係

厚生年金に加入している多くの期間が老齢基礎年金に反映されますが例外もあります。経過的加算を理解するには、この点を整理しておく必要があります。
昭和36年4月以降の20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者期間
この期間は、全て、老齢基礎年金の額に反映される保険料納付済期間となります。ちなみに、20歳以上60歳未満の全期間に相当する480月、厚生年金に加入していれば満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
20歳未満、及び60歳以上の厚生年金被保険者期間
この期間は合算対象期間となり老齢基礎年金の額には反映されません。
但し、経過的加算の対象期間になり、老齢基礎年金とほぼ同額が老齢厚生年金から支給されることがあります。
昭和36年3月以前の厚生年金被保険者期間
上記と同様に合算対処期間になり、かつ、経過的加算の対象期間になります。
経過的加算とは
老齢基礎年金から漏れた期間分を補填
厚生年金の被保険者期間で老齢基礎年金に反映される期間は20歳以上60歳未満(図表ではCの期間)に限られるので、残りの期間、つまり20歳未満の期間(図表ではAの期間)については厚生年金から支給する、というのが経過的加算の主旨です。
同様の理由で、厚生年金に加入している60歳以上の期間と昭和36年3月以前の期間も経過的加算の対象になります。
いつから支給されるのか
老齢基礎年金との差額を補填するものなので支給開始は65歳から、つまり本来の老齢厚生年金に加算されます。
定額部分がなかった人にも支給されます
経過的加算について解説してあるものを読むと必ず「65歳以降は定額部分がなくなるので、定額部分と老齢基礎年金の差額を経過的加算として支給する」と説明されています。
誤解を受けやすいのですが、もちろん、定額部分がもともと無い人にも65歳から経過的加算を受けることができます。
経過的加算の上限
但し、この経過的加算の計算対象になる月数には上限が定められていて、昭和21年4月2日以降に生まれた人は、厚生年金加入期間のうち老齢基礎年金に反映される20歳以上60歳未満の期間と合わせて480月が上限とされています。
例えば、昭和36年4月以降の20歳から60歳までの全期間が厚生年金に加入であれば、それだけで既に480月(老齢基礎年金が満額支給)となり、20歳前や60歳以降の期間で厚生年金の加入期間がいくらあっても経過的加算はゼロ(正確には少額の端数のみ)となります。
経過的加算の額
経過的加算の計算式は生年月日によって異なります。
ここでは、生年月日が昭和21年4月2日以降の場合を例にして解説します。
計算式
AからBを差し引いた額になります。
A:定額単価×厚生年金被保険者期間(上限480月)
B:老齢基礎年金の満額 ×(m ÷ 480月)
m:昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者月数
AからBを差し引いた額になります。
A:定額単価×厚生年金被保険者期間(上限480月)
B:老齢基礎年金の満額 ×(m ÷ 480月)
m:昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者月数
生年月日が昭和21年4月1以前の人は、上記の480月と定額単価に読み替えがあります。
Aの部分は定額部分の計算式になります。
定額部分、定額単価の解説ページ
定額単価と老齢基礎年金の満額を480で割った金額は、ほぼ同額になります。
(余談)経過的加算はいつまで続くのか?
「経過的」、つまり経過的措置なので、いつかは経過的加算は終了することが示唆されています。
ただ、個人的には基礎年金の仕組みが根本的に変わらない限り続くと考えています。
経過的加算の支給月数には上限があり、それを超えると厚生年金の保険料はかなり割高になります。
そのうえ、更に20歳未満と60歳以上の期間も割高にするのはいくら何でもやり過ぎでは、と個人的には思います。