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障害年金の不合理と差引認定(その2)

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前回(障害年金の不合理と差引認定(その1))に引き続き、障害年金の差引認定ついてとりあげます。

差引認定の問題点

差引認定の問題点は「障害状態に見合った障害等級にならない」、この一言に尽きます。その1で取り上げた訴訟を起こした方は、1級の障害状態でありながら3級の認定しか受けられません。

この一言で終わりですが、もう少しその内容について掘り下げてみます。

前発障害が重いと障害等級が低くなる合理的理由がない

差引認定は「現在の障害状態から前発の障害を差引いて判定する」と説明しました。つまり先に発生した障害が重ければ重いほど不利な扱いを受けることを意味していますが、そこに合理的理由を見出すことができません。

「はじめて2級」に該当するとき

更にもうひとつ。
はじめて2級に該当すれば差引認定はされません。この訴訟を起こした方は前発が2級であったため差引認定によって3級にされてしまいました。では、もし前発が一度も2級以上に該当したことがない3級であったとしたらどうなっていたでしょうか。その場合は「はじめて2級(以上)」に該当するため差引認定は行われず、1級の障害年金を受給できたことになります。

前発が3級ならば1級の障害年金、2級ならば3級の障害年金。理屈的にも筋が通っていません。合理性もありません。なぜこのような不合理なことになるのか?、と聞かれたら「運が悪かったから」、「そういった決まりだから」としか答えようがありません。

差引認定の意義

ここまでの話では差引認定は意義のないことになりますが、このような認定法が必要となるケースもあります。

例えば最初の障害が原因で右手の指を2本失った人が、後の障害で同じく右手の残りの3本を失ったケースを考えてみます。
この場合、現在の障害状態は右手の指を全て失った状態です。
このとき、もし前発の障害についてきちんと保険料を納めていなかったことが原因で障害年金が支給されていなければ、全ての指を失った状態の障害等級とするのは不合理です。

このようなときには保険料負担者の公平性を担保するため、差引認定を用いて前発障害の影響を除外した上で障害等級を決めることが合理的であると考えられます。障害年金は公的なものであるとはいえ、福祉事業ではありません。保険である以上は万が一のときに給付を受けるには、事前に所定の保険料を払っておく必要があります。

注目される司法判断

おそらく差引認定はこのようなケースを想定して作られたのではないかと思われます。
しかし、このたび訴訟を起こした方は2級の障害年金を受給していました。つまり保険料未納の問題はありません。おそらく差引認定で障害等級が決定された人の多くが、保険料をきちんと納めていたと思われます。

差引認定がこのような問題をはらんでいることは以前から指摘されていました。行政ももちろん認識しているので、差引認定が盲目的に適用されることはないと思っていました。

そのため、訴訟にまで発展したのは驚きでした。司法判断によって制度の改善が進むことが望まれます。

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