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マクロ経済スライドとは

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よく、「マクロ経済スライドによって年金が減額になる」と言われますが、正確には年金支給額の伸びを抑えるしくみです。
年金は物価や賃金の上昇に比例して増額になりますが、その増額を抑えるのがマクロ経済スライドです。これによって、実質的な年金額が目減りすることになります。

マクロ経済スライド導入の背景

最近よくマクロ経済スライドという言葉を耳にします。なんだか難しそうですが、要するに高齢化社会に対応するために年金を減額することです。このマクロ経済スライド導入の経緯や背景を簡単なチャートで示すとこの様になります。

平均寿命が伸びて、しかも高齢化が進む → 年金受給者が今後どんどん増える → 一方で働き手は減る → このままでは年金制度が危うい → 保険料を上げて働いている人に負担してもらおう → もうそれも限界 → ではどうするか → 年金額を減らすしかない

 

平均寿命の伸びと保険料負担の担い手減少に応じて何十年もかけて年金を徐々に減額していく仕組みがマクロ経済スライドと言われているものです。但し後述しますが、この仕組みによって年金の絶対額(対前年比)が減ることはありません

歴史的な転換点

公的年金の最大の特長はインフレに対応していることでした。つまり、物価が上昇すればそれに従って年金額が増えることになっていました。これは正に国だから出来ることで、民間の年金保険では考えられないことです。このことが年金に対する大きな信頼につながっていたのですが、残念ながらこのメリットを実質的に放棄してしまいました。物価が上昇すれば年金額が上がる仕組みは残りますが、マクロ経済スライドでその一部もしくは全部が相殺されてしまうからです。

どのくらい減額されるのか?

スライド調整率

公的年金被保険者数の変動率と平均余命の伸びの合計でマクロ経済スライドによって減額される率(=スライド調整率)が決まります。政府は毎年1%前後のスライド調整率を想定しているようです。

公的年金被保険者数の変動率

前々年度から過去3年間の変動率(減少率)の平均値となります。

平均余命の伸び

毎年、0.3%の定率で運用されています。

スライド調整率の計算事例

スライド調整率の計算法を平成28年度の事例で説明します。

・公的年金被保険者数の変動率:▲0.4%
・平均余命の伸びによる減額率:▲0.3%

→スライド調整率 : 0.996 × 0.997 ≒ 0.993

適用のルール

常にスライド調整率分がマイナスされるわけではなく、一定のルールの下で適用されます。

ルール1:上昇率が0以下のときは適用しない

物価(賃金)の上昇率が0以下のときにはマクロ経済スライドは行いません。
例えば物価(賃金)変動率がマイナス0.3%あった場合、更にスライド調整率分をマイナスすることはなく、年金の減額幅は0.3%のままとします。

ルール2:ゼロ%を超えて減額しない

例えば物価(賃金)の上昇率が0.5%でスライド調整率が0.991(▲0.9%)だとします。この場合は0.9%をマイナスして0.4%の減額とはせず、前年度と同じ年金給付水準とします。つまり、この場合はマクロ経済スライドによる減額は0.5%分だけになります。

ルール3:ルール1にもルール2にも該当しないときは「減額割合=スライド調整率」となる

具体的には「スライド調整率による減額率 ≦ 物価(賃金)上昇率」、かつ、物価(賃金)上昇率がゼロよりも大きいケースです。

例えば物価(賃金)上昇率が1.0%、スライド調整率が0.991(▲0.9%)のときは、対前年比で0.1%の増額になります

マクロ経済スライドは年金を減額するものではない!?

一般にマクロ経済スライドによって年金が減額されると言われています。このページでもここまで散々、マクロ経済スライドで年金額が減額されると説明してきました。しかし、厳密には物価や賃金の上昇に伴う年金額の上昇幅を抑える(もしくはゼロにする)仕組みであることがお分かり頂けると思います。物価が上昇しているのにそれに見合う年金額の上昇が伴わないため、実質的に目減りすることになります。

マクロ経済スライドが適用される期間

マクロ経済スライドの適用が開始されたのは平成16年度です。その時点では20年程度かけて、約15%の減額を達成する予定でした。

ところがマクロ経済スライドはデフレ下では全く機能しないものなので、平成27年度に初めて実施できる運びとなりました。

ただ残念なことに、その約10年の間に年金財政はますます悪化して、マクロ経済スライドが適用される期間は20年では済まなくなってしまいました。報道等では30年間続くと言われていますがこれは誤りで、正しくは「年金財政が安定(均衡)するまで」です。現行制度のままならば30年で終わることはないでしょう。なお、翌年の平成28年度は再びマクロ経済スライドは実施されませんでした。

今後の見通し

この先、どのくらい年金が減額されるのか多くの人が最も関心ある点だと思われますが、20%、30%、もしくはそれ以上になることも覚悟しておいたほうがよさそうな雰囲気です。とりあえず「年金財政が均衡(安定)するまで」は年金額は減り続けます。ただ、現行のマクロ経済スライドは既に機能不全状態に陥っているので制度の大幅な改変、もしくは新たな年金減額の制度を創設して年金額のカットが実施されると思われます。具体的にはデフレ下でも年金が減額できる仕組みに改定されることは間違いありません。

マクロ経済スライド適用期間の年金額改定方法

年金制度の改悪か?

マクロ経済スライドによって実質的に年金が目減りしてしまう事をもって、「制度の改悪だ」との声がよく聞かれますが、私はそうは思いません。現在の年金制度は保険料を負担する現役世代と年金を受け取る世代のいわゆる「年金の世代間格差」が余りにも広がりすぎたからです。

将来の年金を安定させるため、現在の年金受給者にもある程度の負担をお願いすることはやむを得ないことと思います。それでももちろん、現役世代の方がずっと大きな負担を強いられることは言うまでもありませんが。

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